井之頭病院 看護部

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人間の医療・動物の医療


訪問看護室に勤務してはや8年。業務では注射を行う機会が全くありません。
でも私は、夜な夜な点滴用の針を手にしています。何のためか?
それは、人間にする点滴ではありません。腎不全を患う飼い猫・ぐぅ吉に皮下補液をしているのです。

 

ぐぅ吉は16歳になった雌猫。6歳の頃から腎臓が悪く、8歳の頃に1回がくんと体調が悪くなりました。
入院して一命を取り留めて以降、腎不全が進み、自宅で週に2~3回の割合で皮下補液をするようになっています。
少しずつ頻度が増えて、今では毎日皮下補液が欠かせません。

 

おもしろいことには、ぐぅ吉は皮下補液を嫌がらないんです。写真をご覧ください。おとなしい感じでしょう?
背中に針を刺し、クリップで毛と針を留めると、そのまま終わるまでおとなしく座るか寝るかしているんですよ。
他には薬も2種類飲ませています。

 

フードも腎不全用の低タンパクフードですし、正直お金はかかります。でも、これも働く原動力の1つ。子どももいない気楽な共働き夫婦ですから、1つくらい強いしがらみがあっても良いよね、とポジティブに考えています。
猫の皮下補液をしているというと、「看護師さんだからできるんですね」とよく言われます。でも、実は人間の看護師は、動物に対してなんら特権はないんですよ。

 

実際、皮下補液を自宅でしている飼い主は意外に多いんですよ。実は、なんの資格もいりません。でも、医療処置に慣れているから簡単にできるというのは事実でしょうし、飼い猫の役にも立つと思えば、改めて看護師になって良かったと思うのでした。

 

おかげさまで去年の年末には、お世話になっている獣医さんが所属する杉並獣医師会から、長寿猫の表彰状をいただきました。本当に手塩にかけてきた結果なので、とてもうれしかったです。
以前は、犬猫は毎年7つずつ年をとると言われましたが、実際は、年を重ねるにつれて、加齢は緩やかになります。

 

よく知られている猫の年齢換算式は24+(猫の年齢-2年)×4歳。最初の2年で24歳まで年を重ね、後は4歳くらいずつ年をとる……というのは、実感としてもしっくりきます。
この式に照らすと、16歳は、80歳。猫の1年が人間の4年とすれば、3ヶ月で1歳年をとるんですよね。本当に毎日、かわいがってやりたいと思います。

 

人間も動物も、医療の恩恵を受けて生きられる時間は長くなってきました。今の治療効果が続き、少しでも長く生きて欲しいと、私たち夫婦も願っています。今はまだ取れる手立てに限りがあるから、諦め時は自ずと決まります。

 

けれどもこの先さらに進歩したら…….?
人間の医療同様、老いや寿命が受け入れ難くなる日も近いのかも知れません。そんなことも頭の隅に起きながら、ぐぅ吉とよい時間を過ごしています。

 

以上、今回は人間の医療ではなく、動物の医療の話でした。

 

訪問看護室 宮子あずさ


2017年5月9日

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