井之頭病院 看護部

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訪問看護師のきもち「訪問看護の苦労とおもしろさ」


この病院に勤めて、この春で丸五年になります。
ここに来るまでは、都内の総合病院で22年間働いていました。内科病棟で9年、精神科病棟で13年。
途中緩和ケア病棟(いわゆるホスピス)でも少し働きました。精神科単科の病院は初めてです。

 

こう言ったら申し訳ないのですが……、訪問看護室に配属されたのは、たまたまのなりゆきでした。
面接で、「週に3日程度の勤務で、お役に立てる所ならどこでも」と申し上げたら、
訪問看護室の配属になったのです。

 

前の病院ではずっと病棟でしたから、「いやいや、本当に大丈夫かな~」と、かなり不安でした。
その一方で、まったく新しい仕事に、魅力を感じたんですね。
これまでとまったく違う世界に苦労しながらも、すぐにおもしろくなりました。

 

まず苦労から。これは、何より利用者さんの生活に合わせるのが大前提という点です。
たとえば以前、ある女性の同僚が訪問した所、利用者さんの男性が、下着姿でくつろいでいたそうです。
この状況で一対一で向き合うのは気が引けますから、
「あの……、ちょっとそのお姿では……」と上に何か着てくれるよう頼んだわけですね。

 

ところが返ってきた答えは、「いえ。おかまいなく。私の家ですので」。
こう言われると二の句を告げないのが、相手の家に入れていただく弱み。
あの手この手でお願いしてなんとか着ていただくようにはするのですが、
ここまででかなりのエネルギーを消耗します。

 

この弱腰は、訪問看護の宿命とも感じています。
理屈だけで押せない、圧倒的にアウェイな弱さ、とでも言うのでしょうか。
このほか内服管理や生活指導など、すべての局面で、病棟のように、きりりとはいきません。
逆に、「患者さん中心」と言いつつ、病院内では、まだまだ医療者主導で物事が運ばれていると、
改めて思いました。

 

では、次に訪問看護のどこがおもしろいかというと、この苦労がそのままおもしろいんですね。
自分がこれまで当たり前のようにやっていたことを、考え直さなければならない。
その新鮮な驚きと、それによってもたらされる変化がいいんです。
時に厳しいお言葉をいただき、がっくりくることもあります。

 

けれども考えようによっては、三十年近く働き続けても、真剣に自分を振り返る機会を持てるなんて、
本当にありがたいことですよね。
これから桜の季節。

 

電動自転車での訪問は、この時期が一番すてきです。
新たな春を新たな気持ちで迎えたいと思います。

訪問看護室 宮子あずさ


2014年4月23日

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